道はコールタールで整備され、両端の草木は伐採されている。
真っ黒な道の先に何があるのかと目を細めてみれば、そこには亡き父の愛用していたデスクと父の残した会社の現社長、元秘書、そして屋敷で雇っている執事長がいた。
こちらを向いてにこり、と笑っている。
現社長は書類を、元秘書は判子とサイン用ペンを、執事長は父のティーカップを。
みんなオレを父の代用品としか見ていない。
愕然としながら後ろを振り返ってみると、そこにも道があった。
しかしこの道は整備されたコールタールの道と違い、岩や草でボロボロになっている。
崩れかけたコンクリートの道からは雑草が目を出しており、木々が覆うようにのっしりと道に掛かっている。
木漏れ日が差し込み、こちらの道は白く見えた。
道の先を見ると、木々の間から微かに黒と赤のシルエットが二つ見える。
こちらをむす、とみている。
黒い方は拳銃を握りながらあくびをし、赤い方はハンドナイフの手入れをしている。
無関心そうな二人はこちらを見るなり、なんだ、と言いたげそうな顔をする。
あぁ、やっぱり、
オレは迷っていたことが馬鹿らしくなってきた。
決めるのに躊躇する理由が見当たらない。
そうだ、
オレは
『やっぱり旅を続けるのがどうしようもなく楽しいよ』
言葉なんか発せられなくても、声なんかが出なくても、二人の顔をみて、結末の分からない道を進んで、色んな人と触れ合って、自分を見つけていきたい。
生まれた意味。力の意味。
二人とならわかる気がする。
『―そう思ってお前らについてきた。
質問はあるか?』
淡々と己の旅の目的とその経由を話す森見臣藏に、ぜはんぐ・らいと、エリック・ディーンの2名は絶句した。
「重ええええよおお!!!」
「その様に言われてしまうと…これからが断りづらいですね…。」
ぜはんぐが「そこじゃねぇよ」とエリックの肩をたたき、それに応戦するようにエリックがぜはんぐの首根っこをつかんでテーブルに押し付けようとする。押し付けられまいと抵抗し、エリックの足を払いのけ、ガクンと椅子に落ちた衝撃を利用して今度はぜはんぐの脛を蹴る。
二人の喧嘩が勃発し、森見は話の途中であるのだが、と伝えようと思ったが二人の仲良さに圧倒された。
殴りながらも笑う。
あぁ、本当に。
本当に、この二人が仲間でよかった。
森見の喧嘩するほど仲がいいと思った。