「こんばんわ」
不意に背後から爽やか且つ男性的な声がした。
慌てて振り返ってみると、
「榎さん。こんばんわ。」
私は軽い会釈をした。
機嫌好さそうに挨拶をしてきた榎木津礼次郎は私の数少ない病気の理解者であり、京極党によって作られた新たな関係者だ。
何故か機嫌好さそうにこちらを覗いてくる。
「あの、榎さん?」
身長の高い榎木津は何時も私の身体にのし掛かるように話しかける。
「上から見られたら僕は押し潰されてしまいます・・・」
「そうか、なら僕のために潰れろ。」
そう言うと、身体をより重ねて、最早私の標本でも取る気なのかと思わせた。
「や、止めてください・・・ちょ、苦しいです・・・うぐぅっ」
「あっはっはぁ!精精猿の分際で頑張りたまえ!」
実に愉快そうに高笑う。
人の話を聞かぬ先輩には手を焼くのだが、この人は人一倍手がかかる。
「ところで、この関口巽君に何かご用ですか?」
前方からやけにぶっきらぼうな声が聞こえてきた。
何だ、と見上げると、
「あ、」
「中禅寺、」
榎木津が先に口に出した。
黒い学生服を鎌提げた死神の様に着こなしている。
「ふふは!どうした、そのムッツリ不機嫌顔はァ!!」
「そんな顔していません。」
本を読んでいたらしく、手の開いたままの本をそのまま顔に当てて隠した。そして厭な物でも視るようなどぎつい目付きで冷たく尋ねた。
「それよりも関口君に何かご用だったんじゃないですか?」
「用など後からやってくるものダ!!そんな物に意味など無い!!!」
「意味の無いものに、僕は今潰されかけているんですか・・・?」
「如何にも!」
「・・・勘弁してくださいよ」
実際、本当に勘弁してほしかった。言動は何時も突発的で何事にも法則を作らない変人にはこりごりしていた。
だが私に重くのし掛かり続ける榎木津に、眼前の友人は睨みを一層強くさせた。
「榎さん、知っててやってるなら怒りますよ。」
今までに無いほどの強い口調で榎木津に謂う。知らない友人の一面を見たみたいで、なんか、怖い。
「まぁまぁ、そう怒るなよ中禅寺。」
高笑いする榎木津に怒鳴る。
「怒ってなんかいない!」
初めてこんなにも露骨な怒りと表情を見た。こんなに大声を出すのは中禅寺らしくない。そこでやっと中禅寺は我に戻った。
「っ、と、とにかく、早く離してあげてください。」
「わかった、分かったよ中禅寺」
尚も笑い続ける。
パッと放されて、全身が解放されると同時に榎木津により前へ押し倒された。急いで中禅寺が床につく前に拾い受けてくれたが、当然バランスを崩してしまい妙な方向へ倒れる他なかった。
「わるかった。君の物だったな。」
そう言い残すと、上級生の友達の所へと去っていった。
顔面蒼白な私と真っ赤な顔の中禅寺を残して。
思わず行動の意の不明さに困惑し、目を会わせる。より赤く顔は熱をおび、そっぽを向く。
「つ、次は国語だ。」
「、うん。」
どこからか気恥ずかしさが込み上げてきた。
2012/10/30
2012/10/29
2012/10/25
壱
京極党。
そう、私が彼を呼び始めたのは丁度この古本屋—京極党—が建った時が初めてだったか。実はそう好く覚えていない。
思い出は何時も曖昧だ。
「おい、関口くん。」
そう、仏頂面で喚ばれたのは確か—
「な、なんだい、中禅寺くん・・・?」
やや挙動不審気味に返事をするとはぁ、と溜め息を吐かれた。
「君って人は・・・」
机の上を気のない指で指された。慌てて前方を見ると、同じプリントが2枚あった。私は窓際、最後から2番目に席を置いている。つまり—
「いつまで経っても僕に渡らない。」
「すまない・・・!」
最後の関に座っている人に慌てて渡した。
ありがとう、と一言礼を謂ってから紙を握った手は余りにも細かった。
中禅寺秋彦。
このクラス一の変人だ。
つまり言うと、この鬱病気のある私以上に、得体の知れない、化物、である。
高等学校も丁度入り半年経った。秋になり、冷たい風が頬を打つ。
ぶるっ、と体が震える、ある帰り道の事だ。
「おい、」
背中に向かって声が殴られた。
「え、 あ、 ちゅう、 」
声に戦き、振り向くとそこに黒い男が居た。
「ちゃんと喋りたまえ、君・・・ まったく。これだから駄目なんだ。」
「なっ・・・?」
なんと無礼極まりないことを人に言う人なのだろうか。私は反論を言おうと思ったが、同時にその通りだと思い口を閉ざした。
「何か、用か。」
「まぁ、色々と。」
ぶっきらぼうに答えられたは好いが、その後が続かない。
「・・・」
「・・・」
冷たい風が二人の沈黙に唯一音を発ててくれる。だがそれも止み、また新たな沈黙が訪れた。
「ところで君、蕎麦は好きかな。」
「え、」
「ならば嫌いか?それともアレルギイなのか?」
「あっいや、」
答える好きも与えずに喋り続ける。間に私の妙な間の手が入っている。
「うどんも好いね。あ、ところでお好み焼きは知っているかい?」
「お好み焼き・・・?」
「あぁ。西日本辺りでは何処が有名だっけな。」
「・・・君は好きなのか?」
普通に、食の好みを自分から聞いてみた。ただ、一問聞いてみただけなのに、目の前のこいつはさも不思議そうに、驚いたかの様な表情でこちらを見返した。
「あぁ、とても好きだ。」
笑顔で言い放たれた言葉が胸に刺さった。
私に笑顔を向けないでくれ。
そういう病気なのだ。
「そうか・・・。」
私は10代にして鬱病を患っていた。
そう、私が彼を呼び始めたのは丁度この古本屋—京極党—が建った時が初めてだったか。実はそう好く覚えていない。
思い出は何時も曖昧だ。
「おい、関口くん。」
そう、仏頂面で喚ばれたのは確か—
「な、なんだい、中禅寺くん・・・?」
やや挙動不審気味に返事をするとはぁ、と溜め息を吐かれた。
「君って人は・・・」
机の上を気のない指で指された。慌てて前方を見ると、同じプリントが2枚あった。私は窓際、最後から2番目に席を置いている。つまり—
「いつまで経っても僕に渡らない。」
「すまない・・・!」
最後の関に座っている人に慌てて渡した。
ありがとう、と一言礼を謂ってから紙を握った手は余りにも細かった。
中禅寺秋彦。
このクラス一の変人だ。
つまり言うと、この鬱病気のある私以上に、得体の知れない、化物、である。
高等学校も丁度入り半年経った。秋になり、冷たい風が頬を打つ。
ぶるっ、と体が震える、ある帰り道の事だ。
「おい、」
背中に向かって声が殴られた。
「え、 あ、 ちゅう、 」
声に戦き、振り向くとそこに黒い男が居た。
「ちゃんと喋りたまえ、君・・・ まったく。これだから駄目なんだ。」
「なっ・・・?」
なんと無礼極まりないことを人に言う人なのだろうか。私は反論を言おうと思ったが、同時にその通りだと思い口を閉ざした。
「何か、用か。」
「まぁ、色々と。」
ぶっきらぼうに答えられたは好いが、その後が続かない。
「・・・」
「・・・」
冷たい風が二人の沈黙に唯一音を発ててくれる。だがそれも止み、また新たな沈黙が訪れた。
「ところで君、蕎麦は好きかな。」
「え、」
「ならば嫌いか?それともアレルギイなのか?」
「あっいや、」
答える好きも与えずに喋り続ける。間に私の妙な間の手が入っている。
「うどんも好いね。あ、ところでお好み焼きは知っているかい?」
「お好み焼き・・・?」
「あぁ。西日本辺りでは何処が有名だっけな。」
「・・・君は好きなのか?」
普通に、食の好みを自分から聞いてみた。ただ、一問聞いてみただけなのに、目の前のこいつはさも不思議そうに、驚いたかの様な表情でこちらを見返した。
「あぁ、とても好きだ。」
笑顔で言い放たれた言葉が胸に刺さった。
私に笑顔を向けないでくれ。
そういう病気なのだ。
「そうか・・・。」
私は10代にして鬱病を患っていた。
2012/10/19
2012/10/17
2012/10/16
PCから
久しぶりに投稿させていただきます。
この頃あまりパソコンを開いていなかったもので・・・打つのが一苦労の様に感じたり感じなかったりしますww(どっちやねんてね。はい。)
そういえばですね。
この頃サイコパスのアニメ見てます。
と、まぁ、最近とかこの頃とは言いますけど、アレまだ1話目しか見てませんけどねww
いや、流石虚淵先生だと思いました。アニプレックスが鬼畜なのか虚淵が鬼畜なのか。キャラが必ず死ぬっていう。しかも(一番)人として苦しい死に方をするっていう。
キツイですよね・・・ まぁそこが良いんですがw
サイコパスのキャラデザがまさかの天野明先生でぴっくりです。
リボーンの人ですよね。ジャンプの。
OPとEDがこれがまた個性的な・・・ 良い意味なんですがね。
良い意味ですよ。本当。
凛として時雨っていうバンドらしいですね。OP。何度か曲は聞いたことがあったのですが、バンド名までは知りませんでした。ボーカルさんの高い歌声が本当にミステリーですよね。どこで出しているのやらw 結構好きです。いや、ファンはめちゃくちゃいるんですけどね。
アニソンになるとは思いもしませんでした。まさかって感じで。
EDテーマは、もう。もう。 我らがsupercellのryo様(笑)ですから。そりゃ、最高ですよ。あ、ちょ、そこのあなた。信者とか言わない!信者ではないです!!宗教とか、そういうのもうウンザリなんでw
けど本当に良い曲でした。うん。ただタイトルがアレですね。厨二全開っていうか・・・中二全開っていうか。
アニソンになるのは必然なので素晴らしいものを聴かせていただきました。
内容はネタバレになりそうなので手短に。
主人公の女の子が警察で、犯罪者を抹殺するお仕事を受け持ちます。ヒーローの男の子と一緒に頑張ります。だけど心優しいから人を殺せません。葛藤と仕事と給料の間に彼女が感じるものとは・・・?!
って感じです。
まぁ、要するに見るが早し。
面白かったですよ。何度も言うようですがwww
今日のところはこれで終わりです~~
この頃あまりパソコンを開いていなかったもので・・・打つのが一苦労の様に感じたり感じなかったりしますww(どっちやねんてね。はい。)
そういえばですね。
この頃サイコパスのアニメ見てます。
と、まぁ、最近とかこの頃とは言いますけど、アレまだ1話目しか見てませんけどねww
いや、流石虚淵先生だと思いました。アニプレックスが鬼畜なのか虚淵が鬼畜なのか。キャラが必ず死ぬっていう。しかも(一番)人として苦しい死に方をするっていう。
キツイですよね・・・ まぁそこが良いんですがw
サイコパスのキャラデザがまさかの天野明先生でぴっくりです。
リボーンの人ですよね。ジャンプの。
OPとEDがこれがまた個性的な・・・ 良い意味なんですがね。
良い意味ですよ。本当。
凛として時雨っていうバンドらしいですね。OP。何度か曲は聞いたことがあったのですが、バンド名までは知りませんでした。ボーカルさんの高い歌声が本当にミステリーですよね。どこで出しているのやらw 結構好きです。いや、ファンはめちゃくちゃいるんですけどね。
アニソンになるとは思いもしませんでした。まさかって感じで。
EDテーマは、もう。もう。 我らがsupercellのryo様(笑)ですから。そりゃ、最高ですよ。あ、ちょ、そこのあなた。信者とか言わない!信者ではないです!!宗教とか、そういうのもうウンザリなんでw
けど本当に良い曲でした。うん。ただタイトルがアレですね。厨二全開っていうか・・・中二全開っていうか。
アニソンになるのは必然なので素晴らしいものを聴かせていただきました。
内容はネタバレになりそうなので手短に。
主人公の女の子が警察で、犯罪者を抹殺するお仕事を受け持ちます。ヒーローの男の子と一緒に頑張ります。だけど心優しいから人を殺せません。葛藤と仕事と給料の間に彼女が感じるものとは・・・?!
って感じです。
まぁ、要するに見るが早し。
面白かったですよ。何度も言うようですがwww
今日のところはこれで終わりです~~
2012/10/11
2012/10/07
買ったんだ~~
なんと・・・
なんとですよ!
私の数少ない相棒に新顔が現れました!!今回はパソコン用付属品ではなく、列記としたハードです!
ハードウェアーです!!
その真名こそ・・・ そにーさんの(不評だが)新米
買いました!!!
やっと←wwwww
前々から買いたかったんですが・・・ やっと購入✧
この上なくうれしいです>\\<
ありがとう、ママン!!
さてさて。
買ったは良いのですが・・・ まぁレビューはこちらとなります↓
なんとですよ!
私の数少ない相棒に新顔が現れました!!今回はパソコン用付属品ではなく、列記としたハードです!
ハードウェアーです!!
その真名こそ・・・ そにーさんの(不評だが)新米
PSVITA!!!
買いました!!!
やっと←wwwww
前々から買いたかったんですが・・・ やっと購入✧
この上なくうれしいです>\\<
ありがとう、ママン!!
さてさて。
買ったは良いのですが・・・ まぁレビューはこちらとなります↓
2012/10/04
2012/10/03
じゅっ。ご
「なんで、ここに?」
混乱するケイネス。
それにまた混乱するデイルムッド。
そして三人の顔を見合わせて混乱する雁夜。
一喫茶店ではあり得ないコンビネーション。だがそれは現実だ。
「お、お知り合いですか?」
と、我慢できずに静寂を切り開いたのはこの状況に一番不釣り合いなデイルムッドだった。
突破された暗黙に続き、ケイネスは口を開く。
「あ、ぁ・・・ 幼少期の友人だ。」
歯切れの悪い解答を不審に思いながら了解する。
「そうそう、って言うけど中学卒業まで一緒だったし、幼少期の友人とは言えないよね〜 あの時はすでに大人七割って感じだったし。」
と、ケイネスの説明をまたややこしく言い直す。
「つまりは、竹馬の友、ってことだろ?」
雁夜が一刀両断する。
二人はその言葉を肯定した。切嗣は雁夜を見ながら、そうそうその通り流石雁夜くん、だとかいう。ケイネスはややぎこちなく頭を上下に降る。目線は切嗣にある。
「しかし、本当に変わってないな、お前は、」
ケイネスが始める。落ち着き始めた四者は各々席につき、やっとついた珈琲に口を付けていた。
ただ雁夜はドクターズストップが懸かっているためにケイネスと同じ紅茶だ。
「・・・、どっちが?」
真剣に問われた雁夜の質問。
確かに久々の再会を果たしたのは、二人、いるのだ。だが、そんなのは前ほどの会話で解ることだ。
「切嗣、だよ。」
やや呆れ気味に紡がれた言葉を雁夜は、あぁ、と受け流す。
「そうかい?」
「そうだよ、」
不思議そうに考える切嗣にケイネスは小さく吐き捨てる。
「—あの時と何一つ変わっちゃいない・・・」
「いや、僕だって変わったところあるから」
と弁解するが届かず。反撃にと渾身の言い訳を言う。
「かわいい妻とかわいい子に囲まれて幸せに暮らしているから!」
瞬間、ケイネスの表情が強張った。
—妻子、が、いるのか・・・
いや、それは当然とも言える。既に二人の年齢は妻子が居ても当然の年齢に達している。つまり、当たり前、なのだ。
寧ろ新婚のケイネスの方がおかしいぐらいだ。
「ふん、私にだって、妻子居るし!」
強がって口調が強め。
「えっ 君に妻子・・・ まさか、この子?」
と驚いた顔をした切嗣はデイルムッドを指す。
「どうも。」
控えめの挨拶。切嗣は驚愕し困惑した。
「嘘だ!こんな大きな息子が居るものか!」
「ばぁか!要るんだよ!」
「信じない!こんな・・・」
「息子が大学生で何が悪い?」
「だって早い僕でさえ娘は小学生だぞ!」
「早いって・・・」
「僕と居た時には既に妊娠・・・?!」
「なっ、は、バカ!ソラウにそんなこと、」
「この変態!」
「お前の方こそ!」
二人の言い争いは続いた。まるで中学生の口喧嘩の様に下品な語句を並べ会い、お互いを罵った。
数秒後、お互い言い尽きた二人は行きを切らしながら笑う。
「ほんと、変わらないな!」
「お前の方こそ変わらんな!」
二人の会話から置いて行けぼりになってしまったデイルムッドと雁夜。雁夜は何かに諦めがついたのか、二人の会話を肴にしながら紅茶を啜った。デイルムッドは、必死に二人の会話を目で追っていた。
笑いも治まり、落ち着いた頃。雁夜は仕事だと言って軽く挨拶をし、切嗣を連れて帰った。
賑やかだった席に落ち着きが戻り、二人は無言で残りをたいらげる。
「忙しい人でしたね。」
「あぁ、全くだ。」
そうこうしている間に時は既に昼の終わりを告げていた。
一方、雁夜と切嗣はというと。
車に乗り込み次なる仕事を終える作業に入っていた。
雁夜が口を開ける。
「で、実際は?」
「前からあそこに出入りしていたことは知っていた。」
運転席からやっぱりと言う声が聞こえる。
「偶然を装い無防備な相手に警戒心を持たせず接近する、確信犯!!」
「まぁね。」
気さくに肯定されて、呆れ果てた。
「なら自分だけで行けよ。おれをダシにするな」
「そう言うけどねー・・・」
相手まで自分に未だに思い入れがあるとは限らないでしょう?と、悲しげに付け足した。
雁夜はとりあえず、うん、と肯定する他なかった。
「それに、あの事はまだ忘れちゃダメだからさ・・・」
切嗣は意味ありげに語尾を鼻唄混じりに上げた。意味のわからない雁夜は頭上にハテナを浮かばせながらサイドブレーキを引き発進した。
「ダメなんだ。」
終。
混乱するケイネス。
それにまた混乱するデイルムッド。
そして三人の顔を見合わせて混乱する雁夜。
一喫茶店ではあり得ないコンビネーション。だがそれは現実だ。
「お、お知り合いですか?」
と、我慢できずに静寂を切り開いたのはこの状況に一番不釣り合いなデイルムッドだった。
突破された暗黙に続き、ケイネスは口を開く。
「あ、ぁ・・・ 幼少期の友人だ。」
歯切れの悪い解答を不審に思いながら了解する。
「そうそう、って言うけど中学卒業まで一緒だったし、幼少期の友人とは言えないよね〜 あの時はすでに大人七割って感じだったし。」
と、ケイネスの説明をまたややこしく言い直す。
「つまりは、竹馬の友、ってことだろ?」
雁夜が一刀両断する。
二人はその言葉を肯定した。切嗣は雁夜を見ながら、そうそうその通り流石雁夜くん、だとかいう。ケイネスはややぎこちなく頭を上下に降る。目線は切嗣にある。
「しかし、本当に変わってないな、お前は、」
ケイネスが始める。落ち着き始めた四者は各々席につき、やっとついた珈琲に口を付けていた。
ただ雁夜はドクターズストップが懸かっているためにケイネスと同じ紅茶だ。
「・・・、どっちが?」
真剣に問われた雁夜の質問。
確かに久々の再会を果たしたのは、二人、いるのだ。だが、そんなのは前ほどの会話で解ることだ。
「切嗣、だよ。」
やや呆れ気味に紡がれた言葉を雁夜は、あぁ、と受け流す。
「そうかい?」
「そうだよ、」
不思議そうに考える切嗣にケイネスは小さく吐き捨てる。
「—あの時と何一つ変わっちゃいない・・・」
「いや、僕だって変わったところあるから」
と弁解するが届かず。反撃にと渾身の言い訳を言う。
「かわいい妻とかわいい子に囲まれて幸せに暮らしているから!」
瞬間、ケイネスの表情が強張った。
—妻子、が、いるのか・・・
いや、それは当然とも言える。既に二人の年齢は妻子が居ても当然の年齢に達している。つまり、当たり前、なのだ。
寧ろ新婚のケイネスの方がおかしいぐらいだ。
「ふん、私にだって、妻子居るし!」
強がって口調が強め。
「えっ 君に妻子・・・ まさか、この子?」
と驚いた顔をした切嗣はデイルムッドを指す。
「どうも。」
控えめの挨拶。切嗣は驚愕し困惑した。
「嘘だ!こんな大きな息子が居るものか!」
「ばぁか!要るんだよ!」
「信じない!こんな・・・」
「息子が大学生で何が悪い?」
「だって早い僕でさえ娘は小学生だぞ!」
「早いって・・・」
「僕と居た時には既に妊娠・・・?!」
「なっ、は、バカ!ソラウにそんなこと、」
「この変態!」
「お前の方こそ!」
二人の言い争いは続いた。まるで中学生の口喧嘩の様に下品な語句を並べ会い、お互いを罵った。
数秒後、お互い言い尽きた二人は行きを切らしながら笑う。
「ほんと、変わらないな!」
「お前の方こそ変わらんな!」
二人の会話から置いて行けぼりになってしまったデイルムッドと雁夜。雁夜は何かに諦めがついたのか、二人の会話を肴にしながら紅茶を啜った。デイルムッドは、必死に二人の会話を目で追っていた。
笑いも治まり、落ち着いた頃。雁夜は仕事だと言って軽く挨拶をし、切嗣を連れて帰った。
賑やかだった席に落ち着きが戻り、二人は無言で残りをたいらげる。
「忙しい人でしたね。」
「あぁ、全くだ。」
そうこうしている間に時は既に昼の終わりを告げていた。
一方、雁夜と切嗣はというと。
車に乗り込み次なる仕事を終える作業に入っていた。
雁夜が口を開ける。
「で、実際は?」
「前からあそこに出入りしていたことは知っていた。」
運転席からやっぱりと言う声が聞こえる。
「偶然を装い無防備な相手に警戒心を持たせず接近する、確信犯!!」
「まぁね。」
気さくに肯定されて、呆れ果てた。
「なら自分だけで行けよ。おれをダシにするな」
「そう言うけどねー・・・」
相手まで自分に未だに思い入れがあるとは限らないでしょう?と、悲しげに付け足した。
雁夜はとりあえず、うん、と肯定する他なかった。
「それに、あの事はまだ忘れちゃダメだからさ・・・」
切嗣は意味ありげに語尾を鼻唄混じりに上げた。意味のわからない雁夜は頭上にハテナを浮かばせながらサイドブレーキを引き発進した。
「ダメなんだ。」
終。
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