2012/01/16

悪夢から覚めない

小説☟注意。

兎虎








ぐじゃぐじゃの布団の少しよれたベッドカバーの上に日系の男が座っていた。哀愁漂う横顔でベッドサイドに置いてある写真立てをそっと持ち上げた。その男、鏑木虎撤は写真の中の人物にでもつくようにはぁーっとため息をついた。

「ともえ・・・」

それはかつて愛した女の名前。
つまり、今は亡き最愛の妻の名前。
口に出したらもう止まるところを知らないため息の大きさ。

はぁぁぁあああああああああぁぁぁ・・・

自分の罪を未だに許しきれてないなは己の心だけなのだが、認めるのもやるせない気持ちになってしまうのがこれもまた。
そしてふと思い出すように脳裏に映ったのは、そんな最愛の元妻を裏切るようないまの恋人の頭部。
艶やかなブロンドで、緑色の瞳がちらちらと眼鏡の奥で輝いていて、そうそう、髪の毛は先が外に向かってツンツンと尖っていて・・・って、あれ。

「どうしたんですか、虎徹さん?」
「っ! あ、あぁ、バニー・・・」

いきなりぬっと、とまでは言わないが、正直気付かぬ内にベッドのあるロフトまで足を運んでいたとのはちょっと・・・と思いながらバニーと呼ばれた男を見つめる。

バニーことバーナビーはシュテンビルトのヒーローを生業としている男だ。ヒーローらしからぬ大胆さで顔を出したり、あまりのイケメン差にタレントとしてこの頃TVに出演したりしている。世にいう勝ち組というやつだ。
そんなバーナビーが虎徹のマンションにいる理由とは、とても単純であり、複雑なことからである。

二人は恋人である。



「いま何か考え事してませんでしたか?」

「いや?気のせいじゃ?それよりも今日は早いな。なんでまた。いつもはオレが一生懸命起こしてもうんともすんとも言わないのに。今日はえらいすんなりじゃなぁい?」

そう言って話の芯を反らすのは虎徹の特技とも呼べるものだ。
バニーは眉毛を苛立ち気に寄せながら虎徹を見据えた。
嫌な視線を感じながら虎徹はバニーの顔をのぞき込んだ。

「ば、バーナビーさぁん・・・?」

その次の瞬間、何人も見据えらないような速さでバニーは虎徹の首元を掴んで自分の体ごとベッドへと突き飛ばした。

「っ!」

「・・・虎徹さん、まさか女の人のこと、思ってませんでしたよね。」

鬼のような形相のバニーに向かって虎徹はコクりと一頷き。
はぁ、とため息を漏らしたバニーは安堵の表情を浮かべていた。

「もう、いっつも疑われるようなことばかりするからですよ!」

そういい、すねたような顔からまた子供らしい満面の笑みに変わった

「ところで虎徹さん、今日の朝御飯はまだ決めてませんけど、どういたします?」

「え・・・じゃお前なんで早起きなんかしてたんだ?」

「あぁ、それは虎徹さんの携帯履歴とかパソコンとかのデータに怪しい女の影がないのを確かめるためです。」

「そっか。」

そういえば言い忘れていました。
こんな平和な毎日ですが、今日も朝からオレの恋人は病んでいます。



- - - - - - -
やっと終わった!
もう、何週間かけて書いたか・・・
とりあえず、ヤンバニっていう。

はい、自分乙。

ちなみに全部携帯で打ちました。
携帯万歳。