2012/08/10

いち!

突風が吹き荒れる9月の事だ。
未だに大学に慣れない行き遅れの者は自分だけになり、一応の寂寥を感じていた。
回りは早くもサークルなどで盛り上がりを見せており、女子は男子にちやほやとモテ囃されている。
その中でも一際目立つ奴がいた。
囲まれるサークルメンバーたちにも、憧れに瞳を輝かせている女子たちにも、一切目を向けることなく只ひたすらに挨拶を一言二言交わすだけの奴がいた。
私は呆れ、だが同時に安堵した。
—あそこの男も、私と同じか。

今年は私、もとい、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが初めて准教授の資格を得て、初めて見知らぬ大学で働くことになった記念すべき年だ。

最も、私はこの転勤を望んでいたのだがな。