2012/12/01

衞宮切嗣の成功3

紫色の魔術師の焔もやはり同じ色だった。
バイオレットに煌めく焔は切嗣目掛けて手に握ってあるタリズマンから放たれる。それを闇に溶けながら避けていき・・・もう何がなんだか。

「貴様、これ程度で私を呼び寄せたのか!」
「ふん、聖杯戦争にも参加したことない奴がよく云う!」
「うるさい!わ、私には私のやることがあるんだ!」
大袈裟に身ぶり手振りをしてみせた敵に右手のサブマシンガンを右から滑らせるように撃ち放った。当然の如く土の壁が攻撃を遮った。
衝撃で、霧で湿っていた土が埃を散らす。
煙から現れた魔術師は笑う。
「ふっ 所詮は単なる下層的襲撃。私を殺そうなど愚かにも程がある。身をわきまえろ、」
手袋で覆われた手のひらを追撃の拠点に向け、叫びながら振りかざした。
「屑がぁぁああ!!!!」

土に命が宿ったのかと疑う程激しく、そしてしなやかに一点目掛けて突き刺さった。砂ぼこりが絶え間なく揺らぐ。そして煙が治まり視界が晴れたとき、魔術師が見たものはー

穢れた赤いネズミの死骸だった。

「僕は溝鼠にはちょっとした思い入れがあってね。魔術師の相手は、彼で十分だと思ったんだ。」
背後から涼しげな英語が聞こえてくれ。それは魔術師がイギリスから来た者だと理解している証拠だ。その上、魔術師という単語まで出すというのは、時計搭から来たのだとも知っている証明になった。
紫色の魔術師は背後からの威圧感で身動きが取れない。そして一枚の衝撃的な文面の用紙が目の前にひらりと止まった。
「これに、契約してもらおうか。」
「・・・っ!」
それは魔術師なら誰でも知っている禁断の魔術。知識的には覚えているが、眼にしたことのない幻の魔術。
「有無なんて言える暇、ある?」

「・・・セルフ、ギアス・・・ッ!」


黒い魔術師殺しは嘲るように微笑んだ。
「だから何さ。」